ウルダハの冒険者居住区であるゴブレットビュート、そのとある区画にあるアパルトメントの一室は濃密な空気に包まれていた。
「……っ、セリアくん……はやく……」
いやらしげな水音と弾む息に消えてしまいそうな小さな声が、セリアと呼ばれた青年の心をざわつかせる。
「はやく、なに？」
恋人の可愛らしい懇願が嬉しくて、わかっているのについ聞き返してしまう。ちらりと顔を仰ぎ見れば、思っていた通りの赤い顔が困った様子でこちらを見返してくる。
「は、やく……………て」
恥ずかしさのあまり肝心な部分が全く音になっていなかったが、セリアは満足げに頷いて先ほどまで恋人の秘孔へ塗りこんでいた潤滑油の余りを己の一物にたっぷりと垂らして先端をあてがった。待ち望んだ刺激への期待に小さく喉を鳴らして強張る体をゆっくりと侵していく。反射で漏れ出る声は色に濡れてセリアを煽った。
「チグ、気持ちいい？」
「ん…ぅん……」
根元まで挿入して身体を密着させながら問えば、素直に首を縦に振って抱きついてくる。回答に満足して口づけながら、ふとセリアは初めて体を繋げた時の事を思い出していた。
初めてという事もあって、入念に準備したつもりではあったもののアウラ族の平均より少し大きめのセリアの男根はチグにとって快楽よりも苦痛の方が大きかった。
「大丈夫？ つらいなら無理しなくていいよ」
なんとかカリの部分まで挿入できたが、直前までは感じていた様子の恋人の表情があまりに苦しそうで中断を提案するも、チグは首を横に振る。ならばと侵入を深めようとするが体は受け入れてくれそうにもない。前にも後にも進めない状況に困ってセリアはチグに口付けた。
アウラ族は愛情表現として角を擦り付けるという事は知識として知っているけれど、セリアには馴染みがない。チグと試してみた事もあったが、どちらかといえば口吸いの方が気持ちよくて好んでいる。テクニックにも少なからず自信はあったので、とりあえず恋人の気を紛らわせようと必死に口付けを続けた。
「…セリアくん、いき、できない…まって…！」
「っ……！ ごめん！」
苦しげな声に静止されて慌ててチグの唇を解放する。荒い呼吸を繰り返す恋人は、苦しそうには見えたが先ほどの顔面蒼白の状況から少し持ち直したように見えた。
「チグ、少し力入れてみて」
よくわからない、という表情で返答されて、セリアは少し腰を揺する。
「入ってる俺の、押し出すつもりで力入れてみて。そうすると入るから」
「………わ、わかった…」
素直にアドバイス通りに力を入れると、少しずつセリアの一物が中に入っていく。
「うん、そうそう。上手だねチグ」
「…セリアくん？」
懐かしい気持ちになっていた所を恋人の怪訝な声で現在に引き戻された。いつもより口づけがおそろかになっていたらしい。
「なに考えてたの…？」
不安そうなチグの表情に嫉妬の気配を感じてセリアは微笑んだ。
「ん〜、チグもえっちになったなぁって思ってたとこ」
「えっ！？」
「初めての時とか全然入らなかったのに今は『はやく』っておねだりしてくれるようになったんだなーって」
返答を聞いた恋人の顔がいつも以上に真っ赤になって、羞恥に耐えきれなくなったのか顔を手で覆い隠してしまう。「顔見せて」「やだ！」と甘い攻防を繰り返しながら幸せを噛み締めるセリアだった。
おわり