それから数日後、告白の日は突然訪れた。
「セリアくん、いま少し話しても大丈夫かな?」
「ん、なぁに?」
それは二人で久しぶりに部屋で朝食をとっていた時だった。食べかけのパンを皿の上に戻し、チグが真剣な面持ちで声をかけてくる。
「えっと……その……」
言いだしにくい事らしい。俯いたチグは言葉を探すように視線を泳がせている。
「僕もこっちで冒険者としての生き方みたいなの覚えられたし、そろそろ一人で暮らそうと思ってるんだ」
「え………」
一人で、暮らす…?
思ってもいなかった告白に、セリアの思考が止まる。
「いつまでもこうしてセリアくんの部屋にお世話になるわけにもいかないから…」
チグが、いなくなる?
さぁっと血の気が引くような感覚がして、チグの声が遠くに聞こえる。なにか彼が続けてしゃべっているようだが、内容をよく理解できない。
「まだ部屋が見つかった訳じゃないから、すぐではないけど、見つかったら」
「なんで、やだよ、うちにいてよ!」
聞きたくない一言をチグが言いかけた気配を察して、セリアは慌てて否定した。
「え? で、でも……」
「やだよチグ行かないで」
ずっとこのまま一緒にいたいのに、離れるなんて言わないで欲しい。
「でもセリアくん、僕がいて迷惑じゃない…?」
「迷惑じゃない!!! なんでそんな事言うの? 俺といて欲しい……置いてかないで……」
自分でも情けないが勝手に涙が溢れてくる。カザンのように死ぬわけでは無いのに、その時と同じくらい心がつらい。
子供のように泣きながらセリアが抱きついてくるので、チグは戸惑い、その頭を撫でることしかできなかった。
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