最近は特に百目鬼を避けて生活していたのに。それなのに。
~Side W~
恐かったんだ。
最近百目鬼と一緒にいても苛々しなくて、心地良いとさえ思っている自分が恐かったんだ。
だから、意図的に避けていたのに。それなのに。
ひまわりちゃんと二人で一緒に帰れる事になって俺は心を踊らせながら待ち合わせ場所に向かう。校門に立つひまわりちゃんの姿に嬉しくなって足を早めると、そこには見慣れてしまった長身がもう一人。
「なんでおまえがいるんだよっ!!」
思わず大きな声を出してしまった。折角避けていたのに。これじゃあ意味がないじゃないか。
最近の俺はやっぱりおかしい。ひまわりちゃんと別れて二人きりになって、俺はむっつりと眉根を寄せて考え込んでいた。
だいたいどうしてこんなに百目鬼の事を意識しなくちゃいけないんだ! そう思うとだんだん苛々してくる。それに奴を意識して避けているせいか、最近
「今日もバイトか?」
突然声をかけられて思考は中断された。ちょっとだけムッとした俺はそうだよとぶっきらぼうに答えた。
「なら侑子さん家の前まで一緒に行ってやる」
「はぁ!? なんでだよ!」
意味不明な一言に俺は思わず声を上げた。どうしてこいつがそんな事をしなくてはいけないのか。
「最近また見るんだろ、アヤカシ」
次の一言に体が強張る。
そうなのだ。最近また頻繁に見るようになったのだ、アヤカシ達を。理由はなんとなく分かる。百目鬼を避けて行動しているからだ。
今まで何だかんだと俺に憎まれ口を叩かれても百目鬼が側にいてくれたから、殆ど遭遇しなかったのだろう。
でも…どうしてそんな事が分かるんだ?
「見るけど大丈夫だっつの」
何故か気恥ずかしくなって強気に答える。
「百目鬼なんかに頼らなくたって俺はな
大丈夫なんだよ、とは続けられなかった。
何故なら、突然百目鬼に抱きしめられていたから。最初は何が起こったか分からなかった。けれど、明らかに体の自由がきかなくなっているわけで。
どうしたら良いのかわからず、そのまま固まっていると百目鬼の顔が近付いてくる。ちょ、ちょっと待っ…
「んっ……ぅんッ…」
唇を塞がれた事に慌てて抵抗してみたけれど、逆に押さえ込まれて舌を絡め取られた。暴れれば暴れるほど逆に深みにはまっていく。
あぁ、どうしよう。そう思った。
どうしてこんな事をされているのに気持ち悪くないんだろう、と。おずおずと彼のシャツに手を伸ばし握りしめる。こうでもしないと立っていられなかった。百目鬼は俺が抵抗しなくなったのを感じ取ったのか押さえ込む強い口付けから優しい口付けへと変化させる。
あぁ、本当に、どうしよう。
おれ、いつのまにか百目鬼のこと好きになってたみたいだ…
―了―
調子にのって四月一日サイド(笑)
こう、四月一日が気持ちに気づく瞬間って萌えません?