「安心しろ。俺も永遠にお前のものだ…」
初めての夜。貴方はそう言ってくれたのに…
私を裏切った…
哀しい、悔しい、、
だから私は貴方の目の前から消えます
サヨナラ。
男に二言はないんだよね、ディアス。
だから、貴方は永遠に僕のもの。
誰かのものになるくらいなら
死んで永遠に僕のものになって下さい…
トライアから忠告を受けたディアスはそれからというもの、言いつけを守り
クロードとの接触を避けていた。
日に日にクロードが痩せ衰えてのが目に見えて分かった。
霊のせいなのか
それとも……
ディアスがクロードと接しなくなってから4週間ほど過ぎたある夜のことだった。
ボーマンはどうも胸騒ぎがしてなかなか寝付くことが出来ないでいた。
おもむろに煙草をふかしてみるが、旨くも何ともない。
ただモヤモヤとした胸の内を更に濁らせただけであった。
「……クロードの様子でも見に行ってみるか…」
考えていても何も始まらないと思ったボーマンは、ふらっと部屋を出ていった。
「あれ…いない……」
クロードの部屋に赴いたボーマンは部屋が空であった事に驚いた。
(……まさか…、あいつっ…)
ボーマンは思わず走り出す。ディアスの部屋へ。
胸騒ぎの原因はこれだったのだ。
クロードの無事を祈りながら廊下を走り、ディアスの部屋の前で来ると…
「血の…匂いがする…」
ディアスの部屋から微かに醸し出ている独特な血の匂い。
ボーマンの頬を一筋の汗が流れ落ちた。
「ディアス…。あなたの全部は、僕の物だから…」
「ふふ、ふふふ、、大好きだよ…ディアス…」
「クロードッ!!」
非常に大きな音を立ててボーマンが扉をぶちこわした。
なぜなら、クロードが誰にも邪魔できぬように鍵をかけていたから…
ボーマンは部屋に入ると目を丸くした。
視界に入ってきているのは血塗れのディアスとクロード。
安否を気遣っていたクロードの方に外傷は見られず、心配なんてこれっぽっちもしていなかったディアスの方は…
……既に事切れているようだった……
(一体…どういうことなんだ…?トライア様、なんか分かるか?)
『急に話をふるとは、いい度胸だな…。
……そうだな、もう霊の気配はしないぞ』
(え?でもアンタ、一ヶ月って意ってたじゃないか)
『差があるのだよ。どのくらいの時間をおけばいいかなんていくら私でも
正確な時間は割り出せない。
だから一ヶ月と妥当な数字を言ったまでだ』
(…じゃあこれは……クロード自身がやったことなのか…)
『…そのようだな』
「おいクロード…。正気か?」
「………ボーマン、さん?…何でここに…」
「お前、自分が何をやったのか分かっているのか?」
「……どういう意味です?」
ボーマンはクロードに事の全てを話した。
クロードが霊にとりつかれていたこと。
ディアスが少しでもクロードと接するようなことがあればクロードの命がなくなっていたこと。
もう少しだけ辛抱すれば…またディアスはクロードを…抱いてくれたこと。。。
ボーマンの話す言葉を真剣に聞いていたクロードの表情はだんだんと青ざめていった。
「じゃあ……ディアスが一言も喋ってくれなかったことは…、全部僕のためだったって事なの?」
「ああ、そうだ。もし、名前を呼んだりしたら、お前が死んでいたそうだ。」
「じゃあディアスは…自分が僕に殺されそうになっているのに…
僕の命のために黙っていたの?何もかも全部我慢していたっていうの……?」
クロードの声は震えていた。
自分が犯してしまった過ちに気付いてしまったから。
クロードは涙を浮かべた瞳でディアスを見つめる。
「ねえディアス。嘘だろ?そんなの嘘だろ??
僕が嫌いになったんだよね?だから…だから僕のこと無視してたんだよね?
答えて!答えてよぉ……ディアスぅ…」
クロードはボロボロ涙をこぼしながらディアスに問う。
どんなに必死に問いかけてもディアスは何も答えなかった。
なぜなら彼の体は、もう時を刻むのをやめていのだから……
すっかり血が抜けて、白く冷たくなったディアスの顔は、見とれてしまうほど静かで綺麗だった。
無くなった右目
唇から滴っていた血糊
……何故か安らかな表情…
心が痛むほど綺麗な顔だった
「そんな…そんな……ディアス…」
「…クロード…」
「っ……うわああああああああああああああああっ!!」
クロードの叫び泣きが、部屋中に響き渡った
その様子をボーマンが何とも言えない表情で見つめ続けていた。。
END
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