「セリーヌさん、最近クロード...ごにょごにょ」
「そうですわね…ぼそぼそぼそ」
何だかんだ言っても仲良しこよしな二人のお嬢さん方が何か話をしている。
どうやらクロードのことについて話をしているようだ。
二人は何やらキャーキャー盛り上がっている。ディアスはそのやり取りを呆れた表情で見ていた。
「ねぇ!ディアスもそう思うでしょ?」
「?」
レナに突然話をふられて困惑するディアス。
心の中でこんな所にいなければ良かったと後悔していたことは言うまでもない。
「だ、か、ら!クロードのことよ。最近クロード色っぽくなったと思わない?」
「…は?なに訳のわからんことを…」
「あら。わたくしはてっきり貴方が…」
「……俺が、一体なんだ」
本当に訳の解らない話題をふっかけられて、だんだんイライラしてきたディアス。
彼がイライラしていると言うことは、口調に含まれているトゲトゲしさから十分感じ取れた。
「あ、ごめんねディアス。気にしなくていいわ」
と、レナが慌てていうとディアスはフンッとその場を去っていった。
「まったく、素直じゃありませんわねぇvv」
「そうですよねー。だって、、クロードは前々からディアスのことがvvv」
『きゃーーーー!!!!』
仲良し腐女子のトークは更に盛り上がる、、、、
それからずっとディアスはぼけーっとクロードを見ていた。
あいつは前と何も変わっていない。レナたちは一体どういうつもりなんだ?
と言う気持ちばかりが膨らんでいく。度々クロードと目があった。
「ディアス?どうした、さっきっから」
「……いや…」
考えるだけ無駄だろうと判断したディアスは、もう寝てしまおうと自室に戻った。
夜中にふと目が覚めたディアスは、なかなか寝付くことが出来ないでいた。
(…気晴らしに散歩にでも行くか…)
どうしても昼間のレナたちの言っていたことが気になってしまう。
クロードが…?
そんなことを考えながら歩いていたディアスは無意識のうちにクロードの部屋の前まで来ていた。
何となく立ち止まって扉を見つめる。
クロードは起きているだろうか…?
ふいに、不思議な気配がした。
ディアスは物陰に隠れる。
気配がどんどんと近付いてくる。人のようで、人ではない、不思議な何かの気配が。
そうっと気配の方を見てみると、そこには……
「…?俺……?」
そこに立っていたのは、まぎれもなくディアス・フラックだった。
人並みはずれた長身。青い長髪。赤い瞳。。。
全てがディアスそのものだった。
そのディアスはクロードの部屋に入っていった。
なんだ、、あいつは、、、
ディアスは思わず部屋の扉の前へと向かう。
偶然にも、扉が少しだけ開いていた。
「ディアス!!」
ベッドの中にいたクロードが嬉しそうな声を出して、そいつに抱きついた。
「ディアス、今日は遅かったね。どうしたの?」
「何でもない。気にするな」
「……うんっ」
クロードはいままでディアスが聴いたこともないような可愛らしい声で返事をしている。
何となく、言葉遣いもいつもと違って女の子のようだった。
「ねぇ、ディアス。早くしよ?」
「ああ…分かっているから、そう急くな」
「えへへ…^^ ん…」
そいつはクロードの唇をふさぐ。
ディアスはその様子を見ていて吐き気がした。
自分とまったく…声まで同じやつが、男のクロードにキスをしている。
それは考えるだけでも寒気がするようなことで、、、
そいつはキスを中断すると、クロードをベッドに押し倒す。クロードに抵抗の色は見られなかった。
「んっ……あ、ディアス…」
そいつに肌を触られて、気持ちいいのであろうか。クロードが甘い声を漏らす。
思わずディアスは後ろを向いて、その光景から目をそらした。
「や……ぁ、んん……ん…」
扉の向こうからクロードの官能的な喘ぎ声が聞こえる。
時折その熱を帯びた声がディアスの名を呼んで、ディアスは不覚にもドキッとしてしまった。
しばらくして、クロードの声が止んだ。
ディアスはずっとその場から動けずに固まっていた、、、
「おい、いい加減デバガメはやめたらどうだ?」
「!!」
気付かれていたのか…
ディアスは意を決して部屋の中へはいる。
「貴様…一体何者だ…」
「俺が何者…か、君に隠す必要はなさそうだね」
そいつはくくくっと笑う。
「僕は……悪魔さ…」
「…クロードに何をしていた。答えろ。答えなければ…斬る」
「待った待った。そんなにカリカリするなよ。今斬ったらこの子も一緒に斬ることになるよ?」
そいつは腕の中でぐったりしているクロードを指さす。ディアスはちっと舌打ちをして、剣を鞘にもどした。
「僕はこの子の願いを叶えてあげただけだよ。何も悪いことはしていない」
「じゃあ何故クロードは生気のない顔をしている?」
「……フフ。僕は悪魔だよ?願いを叶えてあげた替わりにこの子の魂を貰っただけ」
そいつはクロードの髪の毛を弄くりながら微笑む。
「クロードが自ら望んでしたことなのか?」
「いーや。違うよ。でもね、君がいけないんだ」
「何だと…?」
「クロードは…ずっと君のことが好きだったんだ。その事に気付いていなかったのは、君一人だったんだよ。
この子は自分のことを咎め続けていたんだ。同じ男を愛してしまった自分を…ね」
「………………」
「いつもクロードは切ない瞳で君を見ていた。決して叶うことのない君への想いを込めた瞳で」
「…クロード……」
「あまりにその姿がいじらしいものだから僕が君になって、クロードの願いを叶えてあげていたんだよ。
君にばれないように、昼間はいつも通りにしていろ。って、言い聞かせてな」
言い終えるとそいつの背中から黒い悪魔の羽が生えてきた。
「…さて。もう気はすんだろう?僕は行くよ、、この子を連れてね」
「なにっ!!」
「僕はこの子が気に入ったんだ。…お持ち帰りしたって君は別に困らないだろう?」
クスクスとそいつは笑う。
愛おしそうにクロードの頭を撫でて、額に口づける。
「クロードは大切な仲間だ。お前の好き勝手にはさせない…」
「ふーん。助けるつもりなんだ。…ふん。助けられるものなら助けてみろよ!!」
「何だと!?…うわっ!!」
突如、ディアスの視界は闇に包まれた.......