スターオーシャン

ふたりの貴方

「……んっ……あれ?…ここは、何処?」

 

クロードがふと目を覚ますと辺り一面闇だった。
周りを見回しても墨を塗りたくったような黒、黒、黒。四方八方が真っ暗なのである。

「あれ…?僕さっきまでディアスと一緒に寝てたのに…どうして…」

クロードは首を傾げる。
まだ頭が朦朧としていて何が何だかさっぱり分からない。

 

「ディアス?…どこ?…・…いるの??」

何だか恐ろしくなって愛しい人の名前を呼ぶ。しかし、返事は帰ってこない。
帰ってくるのは微かな木霊。己の声のみ。
不安な気持ちでその場に立ちすくむ。

その時。
遙か前方でディアスの声が聞こえた気がした…

 

 

 

あの悪魔に何かをされてからだいぶたった。
未だにディアスの視界を支配しているのは、闇。それ以外何もない。

 

ここにクロードがいるのだろうか?
彼の名を大きな声で呼ぶ。ここにいるのなら、近くにいれば聞こえているかもしれない。

「クロードッ!…クロードいるのかっ!?」

 

 

「…ディアス?」

 

遠くの方から声が聞こえた気がした。
ディアスは空耳ではなかったかと、一瞬不安に思う。

が、しばらくした後闇の向こうからクロードが走ってくるのが微かに確認できた。

「ディアスッ!!」
前方から走ってきた人は確かにクロードだった。
クロードはディアスの姿を確認するやいなやディアスに抱きつき
寂しかったとでも言わんばかりに、首の後ろに腕をまわして口づけを請う。
ディアスは思いがけないクロードの行動に、体が動かなくなった。

「…ディアス?」
クロードからにしてみれば、どうもディアスの様子がおかしい。
いつもなら、ディアスはすぐにでも優しくて安心できる其の唇を重ね合わせてくれたのに。

 

「クロード」

 

遠くから、愛しい人の声がした。

クロードはビックリして声のする方を振り返る。
振り返った先には…

ディアス

 

「…え?」

 

クロードは目の前にあるディアスの顔と、反対の方に立ちすくんでいる
ディアスの顔とを見比べる。

すぐ側のディアスは眉間にしわを寄せ、あちらのディアスを睨み付けている。
あちらのディアスはクロードの方を見つめて優しく微笑んだ。

 

「ディア……ス?」
困惑したクロードはただ愛しい人の名を呼ぶことしかできなかった。

「クロード、あいつを見るな」

「クロード、こっちへ来い。そいつは偽物だ」

 

「…ディアス?」
クロードは不思議そうな顔ですぐ側のディアスを見上げる。
「クロード、あいつが偽物だ。騙されるな」

「クロード、早くそいつから離れろ」

「???」

 

「クロード」
「クロード」

 

困ったクロードはとりあえずディアスのそばを離れ、
彼らの丁度真ん中辺りの位置まで歩いて立ち止まった。

交互にディアスの顔を見比べている。
どちらもディアス。
どちらも、大好きなディアス。

でも……

どっち?

どっちが……本物??

 

「ディアス!」
クロードは先程まで抱きついていた方のディアスに向かって叫ぶ。
「…僕のこと…どう思ってる??」
「…どうって…」
クロードの瞳が微かに潤む。
もちろんディアスはその事に気付いていない。

「お前は……俺の大切な仲間だ…」

「うん……、そう、だよね…」

 

 

くるっとクロードは反対側を向きもう一人のディアスに視線を送る。
「もちろん……愛しているぞ、クロード」

 

 

 

 

 

『クロードはアンタの所には行かないよ』

ディアスの頭に突然流れ込んできた、悪魔の声だった。
(何だと…。貴様、どういう事だ)

『さっきも言っただろう?クロードはディアスが好きなんだ。
もし、お前が本物だったら今までのディアスとの関係が全部嘘になってしまう。
愛し合っていた
そう思っていた事が全部嘘になっちゃうからね。

君にとって、クロードは大切な仲間でしかないから…

でも、クロードにとっての君は、愛しい大事な人だから…。くくっ…
僕の、勝ちだね』

 

ディアスはぎりっと悔しそうに歯軋りをする。
…言い返せなかった……

 

 

 

「ディアス…」

長い長い沈黙を保っていたクロードが口を開いた。
てくてくと、ディアスへ歩み寄る。

 

「貴方が…本物だろ?」

 


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投稿日:2010-01-01 更新日:

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