「うわ、どうしよう。だいぶ降ってるよーι」
頃は水無月。一年で最も雨が降る季節。
「ディアス傘持ってる?」
僕は後ろを振り返る。
ディアスは一本の折り畳み傘を手に持っていた。
「どうしたの、それ。出かけるときはあんなにいい天気だったのにさ」
「レナに持たされた」
あはは、やっぱり、と僕は笑う。
今日は僕とディアス、二人で買い出し。
まず最初にアイテムを補給して、不要な物を売る。
余ったお金で戦闘に役立つアクセサリーを買って…
ごくごく普通の買い出し。
「気持ち悪いぞ」
「え、何が?」
「お前の顔。何にやついているんだ」
「ふふ…だって楽しいんだ♪」
ディアスは首を傾げる。
ホントつまらない普通の買い出しだけど、こうしてディアスと二人きり。
それだけで僕は嬉しいし、楽しい。あっという間に時間が過ぎてゆく。
「クロード。傘、入らないのか?」
「うん。いいんだ。その傘はレナがディアスに渡したんだろ?」
そういってディアスに背を向ける。ちょっと嫌みに言ってみたけど…気付いてないのかなぁ、やっぱ。
――雨が心地よい。
雨は好きだ。いやなことを全て洗い流してくれるような、そんな感じがする。
「気持ちいい……ん?ディアス?」
不意に後ろからディアスの傘が僕の上に覆ってきた。
「お前は良くても、俺が困る」
「どおして?」
「風邪引いたお前の看病をさせられるのは、俺だからな」
ディアスは僕をぎゅっと抱きしめる。心配してくれてるんだ?えへへ。
「ディアスありがとー…」
僕はぎゅーっとディアスを抱きしめ返す。
二人で一つの傘を差して帰路を歩む。
「…愛愛傘だね、ディアス♪」
「莫迦」
「いーんだよ、バカでも」
バカな僕を好きでいてくれるディアスが居るから……。
僕はディアスの右腕に自分の左腕をからませて、彼の肩により掛かるような体制になる。よくこうして恋人たちが歩いているのを小さいときから見てきた。
「まったく…お前は…」
ディアスは溜息をつく。でもその表情は満更でもなさそうで僕は嬉しくなる。
ディアスが僕に心を許してくれている証拠であって、ディアスが僕のことを好きだという証拠だから。
「あーあ、もう着いちゃった。」
僕はプリシスみたいにぷぅっと頬を膨らませてみる。
「何なら、この辺りをもう一回りしてくるか?」
ディアスが苦笑いしながら僕を見下ろす。
「うんっ♪」
僕はにっこりと微笑んで返事を返した。
少し憂鬱かもしれないけれど、あなたと一緒なら幸せになれる
そんな Happy rain........