スターオーシャン

HAPPY RAIN~DIAS SIDE~

店から出ると雨が降っていた。
先に外に出ていたクロードが空を見上げていた。
  

「ディアス、ちょっといい?」
今日はクロードと二人で買い出し。クロードが一緒に行こうと声をかけてきた。
いざ、出発しようとしてレナに呼び止められる。
空を仰げば見渡すばかり青。雲一つない。
しかし、レナの手にあるものは…
「…傘?必要ないだろう」
俺は呆れて出発しようとする。
「だめよディアス。今日は午後から雨が降るんだから!」
「只の買い出しだ。時間はかからない」
「いーから持っていく!!!!」
レナは傘を無理矢理押しつけ背中を押して追い出すように俺を外に出した。
どうやら、持っていかないわけにはいかないか…ι
  

買い出しの間、クロードは終始ニコニコ…いや、ニヤニヤしていた。
何がそんなに楽しいんだ?
つまらない只の買い出しなのだが。
「ディアスは…楽しくないの?」
突然クロードが問いかけてくる。
只の買い出しだからな…と言いかけて言葉を飲み込んだ。
「ディアスは…僕と一緒でも、楽しくない?」
あぁ…そういうことか。俺はさっきの発言と取り消して良かったとホッとする。
クロードが不安そうな瞳で俺を見上げていた。
「いや…そんなことはない」
俺はクロードの頭をくしゃくしゃ撫で回す。クロードは安心したように微笑んでいた。
  

雨に打たれながら前をクロードが歩いている。
「気持ちいい…」
そう呟いていたクロードの横顔が嬉しそうで楽しそうで…それでいて切なそうで…
俺は溜息をついてクロードに歩み寄り、傘の下に入れた。
「ディアス?」
風邪をひくぞ…と優しく声をかけるつもりだったが、上手く言葉が出なかった。
風邪をひいて、苦しそうにしているクロードを見るのは辛い。
俺は何もしてやれないから。
どうしようもなくなってクロードを抱きしめた。
雨で濡れてしまったクロードの体が、少し冷たかった。
  

クロードと、俗に言う相合い傘をして歩いていた。
宿についてもクロードの希望でこうしてしばらく無意味に歩いている。
それにしても…利き腕である右腕をこうしてクロードに拘束されているのに、どうして俺はこんなに安心していられるのだろう。
クロードを信頼している。同じ剣士として。
…それ以上にクロードを愛している…からなのか?
「ねぇ、ディアス…」
「ん?」
「ディアスは…雨、スキ?」
「……あぁ、今日好きになった」
クロードはにっこりと笑む。
「ディアス……」
クロードが瞳を閉じてキスを請う。
俺はクロードの額に軽く口付けてやった。
  

午後から降りはじめた冷たい雨
雨はじとじととして好きではなかったが、お前が好きにさせてくれた
幸せな雨…なのかもしれない

投稿日:2010-01-01 更新日:

-スターオーシャン
-

Copyright© 桜星 , 2024 All Rights Reserved.