スターオーシャン

蒲公英

部屋で黙々と剣の手入れに勤しんでいるディアスにクロードは後ろから抱きついて質問を投げ掛けた。

「ディアス、タンポポって、好き?」

何の前ぶれもなく降ってきたクロードの問にディアスは眉を顰めた。
「ねぇ、好き?」
…どうしても答えなければならないらしい。
特にタンポポが好きかどうか何て考えたことも無かったディアスは、無難な答えを選んで嫌いではないと応えた。
花なんて、興味がない。
唯一セシルが好きだった花…菫くらいにしか興味がなかった。
ぼーっと、菫を見て楽しそうにしているセシルを思い出していると、思いも寄らないクロードの答えにディアスは再び驚くことになる。
「僕は…タンポポは嫌いだよ」
ぎゅっ…と、自分を抱きしめるクロードの腕の力が強くなる。ディアスは剣を鞘に収め床に置くと、クロードの腕を払って俯く青年を腕の中に抱きしめた。
「ディアスさ、タンポポの花言葉って知ってる?」
「??」
「あはは、知ってるわけ無いか…」
寂しく笑うクロードに居たたまれなくなってディアスはその唇を奪った。
甘く優しく…
「別離」
唇を離した直後のクロードの一言。
「タンポポの花言葉」
クロードはもう一度、花言葉を繰り返した。
「別離だよ」
黄色く色づいた花のなれの果て
ふわりと白く、美しいように見える綿毛は
風の所為で飛ばされてゆく
決して己の意思ではない
一つの花として、連れ立っていた者達と
永遠の別れになるのであろう…

 そんな様が、クロードは小さな頃から嫌いだった。小さく頼りない綿毛達は、これからどうなるのだろうと思うと胸が苦しかった。

「僕は、ディアスと離れたくなんて無いよ。ずっと…ずっと一緒にいたいから…」
「クロード…泣いてるのか?」
腕の中でふるふると首を振るクロード。
一体何があったのか…ひどく感傷的になっているクロードをディアスは抱きしめることしかできなかった。
「俺も…お前と離れたくない。ずっと一緒にいよう、な?」
耳元で囁くとクロードはディアスに抱きついてこくりと頷いた。
ディアスはその細い方をしっかりと、いつまでも抱きしめていた……

Fin.....

投稿日:2010-01-01 更新日:

-スターオーシャン
-

Copyright© 桜星 , 2024 All Rights Reserved.