スターオーシャン

Enter or Delete ?

バスルームからシャワーの音が聞こえる。
今日こそ…今日こそ僕の想いを伝えるんだ。
今、シャワーを浴びているあの人への特別な想いを…

Enter or Delete ?

少し、お酒を飲んだ。
こうでもしないと僕は行動に移ること何て出来ない。
とりあえず、上半身の服を脱ぎ捨てて彼がバスルームから出てくるのをこっそりと待つ。
…衣擦れの音がする…
もうすぐ、もうすぐだ…

ガラッ

彼は濡れた髪をタオルでがしがしと乱暴に拭きながらバスルームからでてきて、どかりとベッドの上に座った。
相部屋の僕の存在なんかすっかり忘れているような態度。…少しムカツク。
僕が彼の目の前に立っても別段木にする様子もなく髪を拭き続けている…。
「ディアスッ…」
そんなディアスに少しの苛立ちを覚えながら、僕は彼に抱きつくようにしてベッドの上に彼を押し倒した。
「…クロード?」
今の状況なんて関係ないようないつもの無表情で彼が僕の名前を呼んだ。僕はゆっくりと深呼吸をする。

「ディアス…僕…、ディアスのこと…好き」

自分の顔が真っ赤になっているのがよく分かった。必死の思いで言葉を繋げ、おそるおそる彼の唇に自分のそれを押し当てて。
「…………抱いて?」
そっと唇を離し囁いた時、首モトにひんやりとしたモノが押しつけられる感触がした。
「…笑えない冗談だな。斬られたいか?」
眉間に皺を寄せ恐ろしい顔をしたディアスがそう言葉を放つと、首にぴりりとした痛みが走る。

剣をあてがわれている

痛みを感じてやっと僕はその事実を理解した。
でも僕はどうすることも出来なくて固まってしまう。
暫くして、ディアスは剣を鞘に収め、荷物を持って部屋を出て行ってしまった。
あんな僕に押し倒された状況からいつの間に剣を構えたのだろう?やっぱりディアスは凄い。
それが僕の頭に一番はじめに浮かんできた想いだった。
「…フラレちゃったな…」

涙は出なかった。

凄く悲しかったはずなのに、でなかった。
ぴりぴりした首の痛みの所為だったのだろうか?
これで僕は彼に100%嫌われたのだろう。

「ふふふ……あははははっ…」

自然と笑いがこみ上げてくる。
こうなることをあらかた予想はしていたけれど……。もしかすると僕は、こうなることを望んでいたのかもしれない。
コーヒーを飲んだ時みたいな苦みが僕の全身に広がっていって、心地よかった。

もう、寝よう…

「今日も…夢の中でしようね、ディアス…」

天井を仰ぎ、僕は呟いていた。

夢の中の僕だけの彼はいつまでも僕だけのモノだ。
僕は夢の中と現実の彼を確定付けたかったのだろう。
今までの関係まで全て削除してしまう結果になってしまったけれど、僕は…後悔しない。

End......

投稿日:2010-01-01 更新日:

-スターオーシャン
-

Copyright© 桜星 , 2024 All Rights Reserved.