彼と夜を共にするようになった理由なんて、無い。
ただ、何となく人肌が恋しかったから彼を拒まずに受け入れただけ。それが…痛かったけど以外に気持ち良かったから彼が求めてくればそれに応えていた。
感情なんて存在しない。
その日は…初めて僕の方から彼を誘った日だった。
「…どうした?珍しいな」
彼は薄く笑って僕を見る。そんなの自分だって良く分からない…。ただ…体が疼いたんだ。
「……別に。いいだろ?しようよ」
僕はそう言って彼の首に腕をまわした。彼は初めての僕からの誘いに嬉しそうに表情を歪める。
その時、ちょっとだけ僕の心の奥の方で何か別な感情が生まれたような気がした。
あくまで「気が」…だけど…
今夜の彼からの口づけはいつもより何倍も甘く感じた。ゆっくりと優しく…そして深く求められる。
今までの彼からの口付けはこんなにも甘かっただろうか?
僕はぼーっとそんな事を考える。
「…クロード、何を考えている?」
「えっ……」
「先程からずっと…俺が何をしてもお前は上の空だ。…そんなに俺の愛撫はつまらないか?」
「ちっ…違うよ!」
思わずムキになって否定してしまった…。本当に今夜の僕はどうかしてる。
いっそ『つまらない』って言ってやればこんな無駄な夜を過ごす事も無くなるんだろうに。そう思っても僕の口はその5文字…たった5文字の言葉を口にすることが出来なかった。
僕の体は、彼を求めているのだろうか…?
「ねぇ…触ってよ」
上目使いでねだるように彼を見つめる。それでも彼は何もしようとしない。
熱くなって疼く躯に僕は苛立ちを覚え始めた。
「ねぇ」
「お前は…」
「?」
「お前はどうして俺に触れてほしいんだ?」
「どうしてって…」
最初に求めて来たのはあんたの方だろ?
でも…今夜は…
「本当に…躯が疼いただけなのか?お前は…俺を嫌っていたんじゃなかったのか?」
…確かに嫌いだった。彼は凄く強くて、僕なんか足元にも及ばないくらい強くって、背が高くって、格好よくて…正直…め~いっぱい嫉妬してた。
そう…
嫌い だった んだ…
「今は…」
「ん?」
「今は好きだよ。だから触って、ディアス…」